虫歯や歯周病にならないため、あなたはふだん、どのようなことに気を付けていますか。
多くの方は、毎日の歯磨きをしっかり行っていることでしょう。しかし、それだけでは十分とはいえません。自分ではきちんとケアをしているつもりでも、気づかないうちに虫歯や歯周病が進行していることがあるのです。
歯や歯茎の健康を守るには、歯磨きなどの自宅でのケアとともに、定期的な歯科医院での健診が欠かせません。プロの手によるメンテナンス、プロの目から見たブラッシング指導、そして、自宅でのケアがあって、美しく健康的な歯を保つことができるのです。
虫歯や歯周病の予防に関心がある方も、「歯磨きさえしていれば大丈夫」と思っていた方も、ぜひ予防歯科の重要性について知っていただきたいと思います。
一人一人違う
歯や歯茎のケア
最近は、企業も歯の健康を重視するようになり、歯科検診やブラッシング指導を行うところも増えています。しかし、治療に訪れた患者さまの口の中をみると、間違った方法で歯磨きをしている方を見かけます。
そうした方の中には、ブラッシング指導を受けたことがあるという方もいらっしゃるのですが、どうしてそうなるのでしょうか。
実は、歯磨きなどのケアの方法は人によって違います。また、「しっかりとよく磨きましょう」と言われて、懸命に磨くあまりオーバーブラッシングになっている方もいらっしゃいます。オーバーブラッシングとは、力を入れてこすりすぎた結果、歯や歯茎を傷つけている状態のことです。
口の中の健康を守るのに
必要な歯の知識
歯を磨くだけでは虫歯や歯周病を防ぐことはできません。もちろん、歯磨きなどのケアや生活習慣の改善は、口の中の健康を守る基本です。しかし、それだけでは足りないのです。
自宅でのケアに加えて必要なのは、専門的な歯の知識です。「知識なら、インターネットや本で調べて知っている」という人もいるでしょう。しかし、それだけではなく、歯科医師や衛生士といったプロから直接聞く「生きた歯に関する知識」が必要なのです。
なぜなら、歯並びや歯を支える骨の形、歯茎の状態は人それぞれ、全く同じ人はいません。全く同じ顔をしている人がいないように、口の中の状態は千差万別なのです。
だから、プロの知識に基づいた知識の裏付けがあってこそ、正しい自宅でのケアができるのです。虫歯や歯周病の予防に、自分にあったブラッシング方法などについて、ぜひプロの指導を受けましょう。
プロによる歯のケア
PMTC
PMTCとは、プロによる専用機器を使った歯のクリーニングのことですが、その目的は、歯の表面をツルツルにすることです。歯の表面をツルツルにすることで、歯に虫歯や歯周病の原因菌の付着を減らすことができます。そうすれば、歯磨きで病原菌を落とすことも容易になります。
もちろん、歯をクリーニングすれば、歯の汚れを落とすことができ、元の白さに近づけることができます。それも大切なことですが、クリーニングの目的は、あくまでも自体を白くするという付加的な要素もあります。ただ、本当の目的は歯の表面の凹凸をなくし、細菌がつきにくくするということなのです。
口内環境を整える
イニシャルプレパレーション
イニシャルプレパレーション(初期治療)は、虫歯や歯周病になりにくくするため、口内環境を整えることです。
歯の治療を掃除に例えてみましょう。もし、部屋の床の掃除をしようとして、物が床に散乱していたら、どうしますか。
まずは、床に落ちた物を片付けますよね。物が散乱したまま掃除機をかけても、しっかりゴミを吸い取ることができませんし、掃除もはかどりません。
それと同じで、口の中の治療をするときも、まずは歯に付いた歯石を取り、歯茎の状態を整えてから手を付けたほうが、いきなり治療を始めるよりも、スムーズに治療を進めることができます。また、口の中を整えることで、別の治療方針を検討できることもあります。
歯科予防の目的は第一義的には、虫歯や歯周病の予防ですが、最終的な目的は「口内環境を整える」ということにあります。
歯に歯石が付着していると、さらに歯垢や細菌が付きやすくなります。ですから、最初に歯石を取り、細菌が繁殖しないようにする。そして、PMTCで歯をツルツルにして細菌が付きにくくします。
口内環境を清潔に保つことは、予防歯科の基本なのです。
歯垢を落としやすくする
シーラント
人の歯並びや歯の形はさまざまですが、どんな人にも虫歯になりやすい場所があります。それは「歯と歯の間」と「歯の溝」です。歯磨きをしているかぎり、これ以外の場所に虫歯ができることはほとんどありません。
実は、「自分はよく歯を磨く」と思っている人でも、磨いている部分は虫歯になりにくい場所ばかりで、この虫歯になりやすい場所までしっかり磨いている人はほとんどいません。
ですから、虫歯予防では、この「虫歯になりやすい場所」をきれいにするかが、ポイントになります。つまり、この部分さえ、しっかり磨ければ、他の部分は多少、おろそかになっても虫歯になることはないのです。
ところが、話はそう簡単ではありません。「歯と歯の間」と「歯の溝」は歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れを落としにくいのです、逆にいえば、汚れを落とすのが難しいからこそ、虫歯になりやすいのです。
そこで、虫歯になりやすい溝を埋めて、溝の深さを浅くするのがシーラント(予防充填)です。シーラントをすることによって、奥歯などの深い溝が減り、歯ブラシで汚れを落としやすくなります。これで、歯と歯の間の汚れを歯間ブラシやデンタルフロスで落とせば、虫歯のリスクをグッと抑えることができます。
歯科医院での
ブラッシング指導が大切なわけ
虫歯や歯周病を予防するのに一番大切なことは、日々のブラッシングなど自宅でのケアです。これによって、虫歯や歯周病菌による感染リスクを軽減することができます。このお手伝いをすることが、歯科医院の重要な役割の一つです。
もちろん、虫歯による痛みや腫れなどを治療するのも、歯科医院の役割です。しかし、本来の役目は、虫歯や歯周病にならないためにどうすればいいのかを伝え、一人一人にあったケアの方法を指導して、みなさんの歯の健康を守っていくことだと思います。
歯科医院で指導を受けるメリットとは
歯科医院で受ける歯磨きなどの指導には、つぎのようなメリットがあります。
11人1人歯の形や大きさに合わせた指導が受けられる
顎がしっかり大きく成長しないと、親知らずが正しく生えず、歯茎からしっかろ頭を出さないことがあります。ほかにも、斜めになったり、横に倒れたりして生えてくることがあります。すると、どうしても歯磨きが難しく、虫歯や歯周病を引き起こしてしまいます。
2自己流のブラッシングでは虫歯や歯周病を防げないことも
歯磨きをした後、鏡でよく磨けたかどうか、確認する方もいらっしゃるでしょう。しかし、みなさんのご家庭にある鏡では、歯の奥や裏側までしっかり確認することは不可能です。
歯科医院であれば、さまざまな角度から歯科医や衛生士が、虫歯になりやすい箇所を確認するので、よりよい歯磨きの方法を指導することができます。
3ブラッシングのチェックをしてもらえる
自分では教わった通り、歯を磨いているつもりでも、磨き残しがどうしてもでてしまいます。そして、それは虫歯や歯周病の原因となります。
歯科医院で定期的に歯を状態をみてもらうことで、しっかり歯磨きができているかどうかをチェックできます。
虫歯や歯周病がひどくなってから治療をうけても、一度ダメージを受けた歯や歯茎は元に戻りませんし、治療で痛い思いをしたうえ、費用もかさんでしまいます。
中には歯科医院で定期的に検診をうけることを面倒だと感じ、費用がもったいないと思う方もいるかもしれません。しかし、歯に痛みや腫れ・違和感が出てから治療を受けたときの身体的・精神的苦痛や費用的負担を考えると、決して無駄や時間や費用ではありません。
ぜひ、歯科医院と二人三脚で健康な歯を守っていきましょう。